第4号 主要病害虫の生態と防除シリーズ【炭疽病】

鹿児島県経済連・肥料農薬課

発生と防除のポイント

茶の代表的病害で、本県では特に多い。5月から10月にかけて発生する。特に降雨の多い二・三番茶期と秋芽生育期は発生が多い。病原菌は降雨で伝搬され、新葉に感染する。潜伏期は概ね20日程度で、摘採後頃に発病する。発病による落葉や葉枯れのため樹勢が低下して、その後の収量・品質や生育に影響するため特に秋芽生育期の発生は重要である。薬剤防除は収穫茶期の二・三番茶期は摘採残葉を守るために萌芽~1葉期散布、秋芽生育期は1~5葉位を守るため萌芽~1葉期と3~4葉期の2回散布とする。

発生生態

●病原菌の種類

糸状菌類・不完全菌類 (ディスキュラ テアエシネンシス)

●発生の状況

普遍的で発生多い  被害大

●病徴と診断

初め、成葉化した新葉に不整形の退緑~褐色小病斑を生ず。その後、不整形・大型赤褐色病斑となり、古くなると灰褐色病斑となる。病斑上に微小黒点(分生子層)を散生する。かなり落葉する。

●被害の様子

葉枯れ、落葉による樹勢低下で翌茶期以降減収する。
秋期発生は影響大・・・被害は一二番茶の減収・品質低下を招く。

●病原菌の性質

発育適温:25~30℃  増殖:多湿・降雨条件の持続で旺盛

●伝染・感染方法

越冬:樹上の病斑組織内で菌糸の状態
伝染:病斑上に形成された分生子が降雨で飛散
感染:開葉間もない新葉(上位1~3葉)の毛茸に付着し侵入・感染
   分生子付着後葉が12時間以上濡れた状態で感染成立

●潜伏期間

小病斑発生まで14~20日  大型病斑発生まで20~30日 (高温で短い)

●発生消長

主に梅雨期の二・三番茶期と秋雨、台風襲来期の秋芽生育期に発生する。最近一番茶期にも少し発生する。

●発病条件

新芽生育期に降雨・多湿条件が続くと多発生する。降雨が最大の発生要因。伝染源病葉が多いと発生は多くなる。品種と発生:品種間差大「やぶきた・さやまかおり・おくみどり」は弱い。窒素質肥料過多で発生しやすい。

防除法

●防除のポイント

① 二・三番茶期は新芽生育初期(萌芽~2葉期)に予防防除する。 
② 秋芽の充実と翌年への伝染源を抑えるため秋芽生育期に重点防除(1~3回)する。
③ 多発状態茶園では整・せん枝により伝染源の一掃を図る。
④ 抵抗性品種を導入する。
⑤ 新芽の生育と降雨状況により感染を予察し、予防効果、治療効果のある薬剤を効率的に用いて防除をすすめる。
⑥ 耐性菌発生を考慮し、ベンズイミダゾール系、ストロビルリン系剤は避け、特効的治療効果を示すDMI剤も連用を避け、年1回程度とする。

※太字剤は地区茶葉栽培層採用薬剤である。

参考  秋芽生育期における病害新防除法 

ダコニール1000とインダーフロアブルまたはオンリーワンフロアブルの混用散布による防除法

予防効果の長い残効性があるダコニール1000(散布後7-10日程度感染を阻止する効果)と治療効果の高いDMI剤のインダーフロアブル、オンリーワンフロアブル(散布12日程度前までの感染の発病阻止効果)を2~4葉期に混用散布する方法により両薬剤の作用特徴を活用し、効率的に1回散布で、感染が起こる秋芽生育期の萌芽~5葉期頃まで概ね20日間程度炭疽病、新梢枯死症、網もち病など病害の感染・発病を阻止できる。また、慣行防除法の散布遅れ、残効低下による防除効果低下などをクリアし、防除効果の安定化が図られる。