第32号 令和6年度地区茶栽培暦(防除暦)について

鹿児島県経済連・肥料農薬課

令和6年各地区の茶栽培暦策定検討会は終了しました。今回の改定では今年の病害虫の発生や防除上の問題が比較的に少なく、また新規登録農薬や輸出茶の残留基準設定追加・変更も少なかったことなどから改定は少ないでした。主な改定は安全性や環境への負荷問題からネオニコチノイド系薬剤が全地区栽培暦から削除され、チャノホソガ防除剤のジアミド系剤が南薩地区に続いて北薩地区でも感受性低下のため削除になりました。また、輸出茶栽培の増加傾向などで各地区とも農家向けに配布資料等で輸出茶栽培暦も別途作成されました。今回は県内全地区の改定された栽培暦と防除をすすめる上での考え方を解説します。

1.栽培暦の概要と防除進め方

〇 炭疽病・・・梅雨期になる二・三番茶期と秋芽生育期防除が設定されていますが、今後一番茶を重視した生産や更新園増加のため秋芽生育期防除がより重要になると思われます。二・三番茶期の萌芽-1葉期はダコニール1000、銅水和剤(輸出茶)で防除されますが、最近増加しているドリンク茶栽培では摘採を遅らせるため摘採葉への発病を防ぐためダコニール1000にDMI剤を低濃度で混用して散布すると上手く防除出来ます。基幹防除の秋芽生育期は従来萌芽-1葉期と3-4葉期の体系防除でしたが、新たに開発されたダコニール1000とDMI剤との混用による3-4葉期1回散布法はかなりの地区で採用・普及してきました。新梢枯死症、網もち病などにも体系防除より安定して高い防除効果が得られます。

〇 輪斑病(新梢枯死症)・・・高温時に発生しやすい病害で、主に三番茶摘採後のカスミンボルドー散布が基幹防除となっていますが、摘採・整枝直後に散布を要するため現場ではかなり防除が難しい現状のようです。この時期の防除は秋芽生育期の新梢枯死症発生にも大きく関与しますので、大切な防除です。

〇 網もち病・・・最近発生が増加している病害で、多発生すると被害が大きいので、注意を要します。主要感染時期は秋芽生育期後半の8月下旬~9月中旬頃で、多湿条件で感染します。今年の8月下~9月は降雨が少なく、乾燥した天候のため少発生に経過しました。防除は秋芽生育期の炭疽病などの体系防除法、混用防除法でも効果を示しますが、本病に効果が高いDMI剤と銅剤を上手く組み合わせて防除すると良いようです。銅水和剤は有機栽培にも使用でき2-3回散布で上手く防除出来ます。

〇 カンザワハダニ(サビダニ類)・・・最近ハダニの発生は減少傾向で、大きな被害は少なくなりました。これは、現在使用殺虫剤の選択性が大きく、カブリダニ類など天敵への影響が少なく、天敵の活動が活発

化しているためと思われます。主要発生期の春期の発生も少なくなり、従来重要な防除時期であった秋期の発生は顕著に少なくなり、栽培暦採用もなくなりました。代わりに更新園等で8月頃、秋芽生育期に発生が多くなりました。更新園の発生は、葉の切除で一時的に葉層内の天敵密度が低下するためと思われます。防除は越冬後増殖期開始期の基幹防除は重要です。また、更新園等の秋芽生育期防除の必要性も高まり、ハダニの全ステージに有効な速効性のダニサラバフロアブルなどによる補完防除が薦められます。サビダニ類の発生は一番茶後に一時的、極部的に発生していますが、ダニゲッターフロアブルの使用で減少傾向です。

〇 チャノミドリヒメヨコバイ  チャノキイロアザミウマ・・・茶の害虫では収量、品質に最も被害が大きく、また発生期間も二番茶期から秋芽生育期まで長期にわたり発生するため年4-5回の基幹防除がすすめられています。防除薬剤も抵抗性発現等を考慮し、系統の異なる剤を配置した防除となっています。二番茶期ウララDF、三番茶期ジアミド系のエクシレルSE、テツパン液剤やアグリメック、秋芽生育萌芽期にコテツフロアブル、グレーシア乳剤、3-4葉期にガンバ水和剤などが概ね固定化されています。

〇 チャノコカクモンハマキ チャハマキ・・・最近発生は穏やかな状態で、一番茶後、二番茶後、秋期に発生みられますが、被害は少ないようです。特に防除を要するのは秋期発生で、各地区とも秋芽生育初期のグレーシア乳剤、コテツフロアブルなどによる体系基幹防除や9月(第4世代)のアファーム乳剤、ディアナSCによる補完防除で対応されています。ハマキ天敵の使用は少なくなり、ハマキコンNはロープ製品になり、南薩地域の一部で普及が進んでいますが、何れも広面積一斉処理が必要と思われます。

〇 チャノホソガ・・・二・三番茶期に発生すると製茶品質に影響し、2019年からは南薩地域、2023年には北薩地域で薬剤感受性低下のため多発生し、被害が問題になりました。二番茶期は被害が大きいため、ディアナSC、IGR系剤のファルコンフロアブル、カスケード乳剤、ジアミド系剤のサムコルフロアブルなどで防除がすすめられていますが、萌芽後の新芽への産卵、潜葉幼虫を確認し防除することが効率的です。また、薬剤抵抗性発現が地域により異なりますので、地区栽培暦採用薬剤で防除します。

〇 クワシロカイガラムシ・・・発生は最近かなり少なくなり、枝条枯死、樹勢衰弱、茶葉黄化などの被害園は著しく少なくなりました。これは選択性殺虫剤の使用などによりコバチ類、タマバエなど天敵類の活性化の影響と持続効果の優れるプルートMCの普及効果が高いためと思われます。しかし、今年は一部地域で発生が増加したと報告もあり油断できません。発生の多い園では、越冬後のプルートMCによる防除または第1、3世代などのアプロードエースフロアブルによるふ化最盛期防除が必要です。

〇 チャトゲコナジラミ・・・県内殆どの産地に発生が拡大し、被害が心配されましたが、乱舞による作業性への影響や煤病発生などの発生程度の高い状況は少なくなりました。スペシャル天敵シルベストリコバチの分布拡大、定着による影響が大きいと思われます。薬剤防除も第1世代幼虫期アプロードエースフロアブル、第3世代ガンバ水和剤などによる他主要害虫との同時防除がすすめられてきましたが、秋整枝後11月頃の第4世代若齢幼虫期防除も農閑期防除として勧められています。

〇 その他マイナー病害虫・・・赤焼病の発生は極局部的発生で、少ない状態が続いています。マダラカサハラハムの今年の発生は少ないでしたが、秋芽生育初期の他害虫との同時防除の必要性は高まっています。ヨモギエダシャク、ミノムシ類、イラガなどの発生も局部的にみられています。

2.令和4年新規登録農薬、登録内容変更について

殺菌剤 新規登録 ミギワフロアブル 炭疽病2000~4000倍 7日前 2回 登録拡大 ムッシュボルドー 網もち病 

殺虫剤 登録拡大 エクシレルSE コミカンアブラムシ  コルト顆粒水和剤 マダラカサハラハムシ 2000倍 除虫菊乳剤 チャドクガ ピラニカEW  コミカンアブラムシ  ヨーバルフロアブル マダラカサハラハムシ

3.製造・販売中止等による削除農薬

殺虫剤 フェニックスフロアブル  ダーズバン乳剤40  キラップバリアードフロアブル  レピクリーンDF

4.輸出相手国(日本 USA EU 台湾等)の農薬残留基準値(MRL)の新規設定状況 (ppm)

ウララDF  日本30→40  カスケード乳剤 日本15→20  グレーシア乳剤 日本5→6 バリアード顆粒水和剤 日本25 USA- EU10 台湾-→10 トレファノサイド乳剤・粒剤 USA0.05