第6号 主要病害虫の生態と防除シリーズ 輪斑病(新梢枯死症)

鹿児島県経済連・肥料農薬課

新系統菌による病害で、1970年代に静岡県から全国的に広がり、重要病害となった。主に高温期の二・三番茶摘採後に発生する。傷感染性で、主に摘採、整枝作業で伝染し、葉・枝の切口から感染する。雨天時の作業で発生が助長される。
薬剤防除は摘採・整枝直後散布を要するため作業労力やドリフト問題等で極めて難しい現状である。被害は葉枯れ、枝枯れによりその後の茶期の茶芽生育に影響する。
新梢枯死症は同じ菌で起こり、秋芽生育期の1-3葉期頃に包葉等の脱落痕から感染し、秋芽枝梢が枯死する症状で、最近発生は多いが被害、影響は少ない。

1) 輪斑病

発生生態

●病原菌の種類

糸状菌・不完全菌 (ペスタロチオプシス ロンギセタ)

●発生の状況

普遍的で、発生多い 被害大

●病徴と診断

成葉の切り口に同心円状の輪紋がある赤褐色円形の大型病斑を生ず。
病斑上に黒点(分生子層)を同心円状に散生する。
茎では、切り口から黒変枯死し、数㎝の枝枯れとなる。

●被害の様子

葉枯れ・枝枯れにより樹勢衰弱・芽の枯死・茶園荒廃等を起こし、翌茶期以降特に芽数の減少により減収する。

●病原菌の性質

発育適温:25~32℃  増殖:高温多湿で旺盛

●伝染・感染方法

越冬:樹上の病斑、健全葉、枯れ枝、落葉組織内で菌糸の状態
伝染:主に摘採機や袋に分生子が付着し伝染、雨による伝染もある
感染:摘採・整枝等でできた葉・茎の傷口に分生子が付着し、感染
   虫害、風害などの傷口からも感染

●潜伏期間

褐色の初期小病斑発生まで5~7日  大型病斑発生まで10~15日

●発生消長

主に、梅雨期で高温期の二・三番茶摘採後に発生する。温暖化などで、気温が高いと一番茶摘採後、秋整枝後にも発生することがある。

●発病条件

高温・多湿・多雨の条件で多発生しやすい。  
伝染源病葉が多いと発生は多くなる。
雨天時の摘採・整枝では発生が助長されるが、降雨がなくても感染する。
摘採機と発生・・・水平回転、往復動刃はシリンダー刃に比較し発病が多い。
また刃の切れ味が悪いと発生が多くなる。可搬型摘採機の収容袋装着は発病を助長する。
品種と発生:「やぶきた」は特に弱い。

防除方法

●防除のポイント

① 摘採・整枝直後(直後~3日後)に薬剤防除する。摘採後時間が経つほど防除効果は低下する。
② 雨天時の摘採・整枝は出来るだけ避ける。
③ 発生園で使用した摘採機は洗浄・消毒し、刃の切れ味をよくする。          
④ 抵抗性品種を導入する。
⑤ 耐性菌発生を考慮し、ストロビルリン系、カスガマイシン剤の使用は年1回とする。
ベンズイミダゾール系剤は耐性菌が残存しているため使用できない。

2)新梢枯死症

発生生態

●病原菌の種類 

糸状菌・不完全菌 (輪斑病菌と同じ)

●発生の状況  

普遍的で発生多い  被害中

●病徴と診断  

秋芽の新梢が成熟する頃、葉が褪色、活力がなくなる。その後、新梢全体が赤枯れ状に枯死する。
この新梢の基部付近(包葉などの落葉痕)に黒変壊死がみられる。

●被害の様子  

秋芽枝条の枯死による枝数減少と充実不良で翌年一番茶が減収する。
症状は目立つが、少発生では影響は少ない。
発生量と減収など被害との関係は不明である。

●病原菌の性質 

輪斑病に同じ

●伝染・感染方法

伝染源:二・三番茶期の輪斑病発病葉が主、枯れ枝・落葉・健全葉も
伝染:降雨で分生子が輪斑病葉などから伝搬
感染:秋芽包葉や不完全葉等の落葉痕から侵入・感染

●潜伏期間      

新梢基部が壊死するまで30日位 新梢が枯死するまでは40日を要す
発生消長  
秋芽生育後期9月中下旬~10月上旬に発生する。
三番茶不摘採園は三番茶新梢に発生する。
中切り・深刈り更新園では再生芽の成熟期に発生する。

●発病条件    

輪斑病多発園で発生しやすい。
包葉・不完全葉が離脱する2~3葉期に降雨が多いと発生が多くなる。
秋芽生育期に台風などによる暴風雨があると多発する。
品種と発生:「やぶきた」は特に弱い。

防除方法

●防除のポイント

① 秋芽1~3葉期に薬剤防除する。(炭疽病などと同時防除)
② 二・三番茶期の輪斑病を防除し、発生源を少なくする。
③ 抵抗性品種を導入する。
④ 包葉の落葉時期が不定なため、多発条件園では本症状に効果のある薬剤を1~3葉期に散布すると効果が上がる。
⑤ ストロビルリン系薬剤は効果が高いので、効果的に使用する。