第16号 主要病害虫の生態と防除シリーズ       チャトゲコナジラミ

鹿児島県経済連・肥料農薬課

発生と防除のポイント

侵入害虫で、2004年に京都で初発生し、数年で全国に被害地域が急速に拡大した。本県では2012年に屋久島で初発し、現在県内のほぼ全域に発生が拡大している。中国では茶の最重要害虫の1種である。年4~5回発生し、幼虫で越冬する。多発すると圃場一面成虫が乱舞し、摘採作業等の妨げになる。また、幼虫が排出する多量の甘露で、煤病を誘発して光合成機能を阻害し、樹勢を低下させる。侵入初期は侵入阻止や拡大防止対策がとられていたが、現在では一般の防除対策がとられている。 薬剤防除は主にふ化後若齢幼虫期に、他害虫との同時防除を兼ね、5月上旬(クワシロカイガラムシ)、8月上中旬(秋芽ウンカ、スリップス等)に行われる。また、シルベストリコバチが天敵として有望で、普及定着し、発生・被害防止に効果を上げている。

発生生態

●害虫の種類

カメムシ目:コナジラミ科

●発生状況

侵入害虫(2004年京都府)全国に発生拡大 本県2012年初発(屋久島)

●形態と診断  

寄生・加害特徴:主に裾葉 葉裏に寄生 甘露により「煤病」併発

成虫:雌1.3mm  紫黒色 斑紋あり

幼虫:0.2~1.3mm 黒色 楕円形

卵:0.2mm 黄色 長楕円形  葉裏に産卵

●被害の様子  

葉裏に幼虫が無数寄生するが吸汁の影響は少ない

幼虫寄生で排出する甘露で「煤病」激発、茶葉を覆い同化作用の低下で樹勢に影響する。

成虫の飛翔乱舞により、摘採など農作業の妨げになる。

●生態・生活史 

越冬:裾葉裏で幼虫越冬 一番茶摘採期頃に羽化する

産卵:新葉の葉裏に産卵 (1雌平均26卵)卵期間 10~20日

ふ化・幼虫:幼虫期間25~50日 越冬幼虫は5ヶ月位 4齢経過

成虫:寿命2~4日 新葉に群がる(写真)

生活史:年3~4回発生

成虫発生は4月下~5月上旬  6月中下旬 8月中下旬

10月下~11月旬

寄主植物:茶 ツバキ サザンカ サカキ ヒサカキ シキミ など

●発生消長

本県における防除を要するふ化幼虫発生は5月上中旬、7月上中旬頃 

8月中下旬 11月上旬の4回である

●発生条件  

県内何れの地域の茶園に分布拡大しているが、発生の拡大は苗木移動周辺の寄生ツバキ科植物からの気流に乗って飛来など乾燥した条件で、発生しやすいと思われる

●天敵  

有力天敵はシルベストリコバチその他テントウムシ類、クサカゲロウ昆虫病原性糸状菌

防除方法

防除のポイント

① 第1世代ふ化幼虫発生期の5月上中旬はクワシロカイガラムシと同時防除する。

② 第3世代ふ化幼虫発生期の8月中下旬はウンカ、スリップスと同時防除する。

③ 越冬幼虫となる第4世代幼虫発生期の11月上中頃に防除する。

④ 裾葉、葉裏寄生のため散布方法に留意し、400Ⅼ/10a程度散布する。

⑤ 若齢幼虫期散布の効果が高いので、適期散布を行う。

⑥ 有力な捕食寄生性天敵シルベストリコバチを有効に活用する 。