鹿児島県経済連・肥料農薬課
今冬は12 月中下旬、1 月下旬に降雪など強い寒波がありましたが、1 月中旬、2 月は温かい日が続くなど寒暖差が大きい中で、全般には寒い冬になりました。立春が過ぎた頃から幾分温かい気候になり、春の訪れが近いことが感じられるようになりました。今後の気象予報では気温は平年並みかやや高い予報となっています。まだこれからも三寒四温の寒暖の変化を繰り返しながら春に向かうと思われます。茶園では一番茶への期待を込め整枝作業なども進んでいますが、これからは晩霜対策などにも十分な注意が必要です。
今回は春に発生し、一・二番茶に被害をもたらすカンザワハダニなどの発生状況と防除対策についてお知らせします。
ハダニの発生のしかた
カンザワハダニは主に春に発生し、一番茶の摘採期頃に多くなり、一番茶の減収や品質低下などの被害をもたらします。一般に雨が少なく、乾燥した温かい天候が続くと急増します。越冬期の気象は、10月後半~11月前半の気温(17.5℃以上で、休眠率が低下)および1月の平均気温(7.6℃以上で、産卵数増加)が高いと多発要因といわれます。また、3~4月の気温、天候が発生に関与し、気温が高く、晴天乾燥気候が続くと発生が多くなります。
冬の間は、日当たりの良い茶畦南側の裾葉で朱色をした雌成虫(写真)で越冬します。しかし、温かい南九州などでは真冬でも年によっては休眠せず、少しずつ増殖しますので卵や幼虫がみられることがあり、一般的には平均気温が8~10℃以上になる2月下旬頃から雌成虫は休眠から醒め、体色も濃赤色に変わり、本格的に産卵を始め、増殖します。
今年の発生状況と予測
越冬密度 並 発生予測 やや多 増殖時期 やや早い
県病害虫防除所の調査結果では春の発生や越冬密度に影響する昨年秋の発生は平年よりやや多い状況でした。その後、晩秋から越冬期初めの12月までは越冬密度はやや高い状態で推移しましたが、冬期の気温の影響のためか1月は平年並みの密度に低下し、2月の調査結果では発生ほ場率は36%(平年37%)、寄生葉率1.2%(平年1.9%)と平年並みで、3月の発生予察情報は今後の気象予報(気温平年並みか高い、降水量平年並みか少ない)などを勘案し、「やや多発生」と予測しています。
私が2月下旬に行った南薩、日置地域の調査における平均寄生葉率は1~3%で、例年よりやや低い状況で、防除所の調査と概ね同様な傾向でした。産地間、茶園間の発生差も少ないようでした。成虫数は5~10頭/100葉でやや少ない状況でしたが、休眠雌率は低く、産卵が既に認められ、最近の気温がやや高いため産卵増殖は例年よりやや早く、増殖が始まる状況のようで、このため発生はやや早くなると思われました。
なお、サビダニ類の多発生がこの数年続いていますが、サビダニ類が寄生している園も一部で認められました。
防除対策
越冬後の春期ダニ防除は、多発する恐れのある一二番茶の被害を未然に防ぐ上で欠かせません。確実に行いましょう。
春ダニの防除は増殖が進んでからは手遅れ・・・先ず自分で越冬ハダニを調べ・・・防除対策
基本的防除は平均気温が10℃を超える頃(3月上旬)にダニゲッターフロアブル、バロックフロアブルなどを散布します。今年は概ね平年どおりの散布でよいでしょう。
しかし、増殖がかなりすすんで発生の多い園ではダニサラバフロアブルを散布します。
越冬後ハダニ防除のポイント
① この時期の防除は増殖開始期であり、長い効果の持続が要求されるため殺卵・殺幼虫効果が高く残効性の長い薬剤の使用が望ましい。(ダニゲッター・バロック)
② 多発生してからの防除効果は低下するので、発生初期防除に努める。
③ 天敵類(カブリダニ類など)に影響の少ない薬剤を選ぶ。
④ 殺成虫効果主体で速効性の薬剤は一番茶摘採期頃に発生が増加するので避ける。
⑤ 十分な散布量で、この時期寄生の多い裾部や葉裏によくかかる散布法で防除効果を高める。展着剤の加用はダニおよび葉裏への薬液の付着が高まり、効果が安定する。