第11号 主要病害虫の生態と防除シリーズチャノホソガ (サンカクハマキ)

鹿児島県経済連・肥料農薬課

発生と防除のポイント
製茶品質に影響の大きい重要害虫である。蛹で越冬し、年間の発生回数は6~8回である。概ね新芽生育と合せ発生するが、成虫発生期と新芽の生育期一致する地域、品種園で被害が大きくなる。二・三番茶期の発生は多く、被害も大きい。三角卷葉内に虫糞を充満させ、製茶品質(水赤)を低下させる。新芽の萌芽~2葉期頃に葉裏に産卵し、幼虫は潜葉期、葉縁卷葉期を経て摘採期頃に三角卷葉期となる。
防除は萌芽~1葉期の卵~幼虫潜葉期頃に薬剤散布する。2・3葉期以降の産卵では被害は少ないので、防除の必要はない。

発生生態

●害虫の種類

昆虫・鱗翅目

●発生の状況

普遍的に発生  被害大

●形態と診断

寄生・加害特徴:新葉を三角卷葉加害  茶園の全面に発生
    新葉裏面の微小水滴状の卵粒、表皮下潜葉・葉縁卷葉幼虫で確認
成虫:翅の中央に金色の三角形斑紋があり、約4㎜で細長い
幼虫:孵化直後の潜葉期幼虫は葉裏表皮下を食害、約0.6㎜ 
葉縁を巻く葉縁期幼虫を経て、三角卷葉幼虫へ発育
  三角卷葉幼虫は8~10㎜で卷葉内に虫糞を充満
蛹 :葉裏に繭を作り、約6㎜
卵 :葉裏に1粒ずつ産卵 約0.5㎜微小水滴状 (微小な水滴が付いたように見える)  
   1葉当たり1~6粒 総産卵数20粒

●被害の様子

卷葉内の虫糞が製茶品質(特に水色が赤くなる)を著しく低下させる。
卷葉30葉/㎡以下では影響がなく、100葉/㎡以上で品質が低下(水赤)。
(三角卷葉量が摘採生葉量の5%未満までは影響はない、5%を越すと、水色が赤みをおび、25%を越すと飲用できない状態になる。)
卷葉の褐変落葉で茶芽生育にも幾分影響し、減収被害もある。
チャノキイロアザミウマ、カンザワハダニの好適な生息場所にもなり、これらの発生加害を助長する。

●生態・生活史

越冬:蛹(葉裏) 3月~4月に第1回成虫羽化 4月中旬発蛾最盛期
卵期間: 3~7日
潜葉幼虫(1・2齢)期間:7~10日 新葉表皮下潜行で吸液型
葉縁幼虫(3齢)期間:2~4日 新葉組織食害型
三角卷葉幼虫(4・5齢)期間:5~10日 卷葉食害型 卷葉内に糞充満
蛹期間:10~16日    産卵~羽化期間:32~49日

●発生消長

年間発生回数は5~7回
2月下旬~4月に越冬世代成虫が発生し、幼虫被害は4月頃・一番茶期からほぼ1カ月おきに発生
第1世代幼虫:4月下~5月上旬(一番茶芽) 成虫:5中~6月上旬
第2世代幼虫:5月下~6月中旬(二番茶芽) 成虫:6月下~7月上旬
第3世代幼虫:6月下~7月中旬(三番茶芽)  成虫:7月下~8月上旬
第4世代幼虫:7月下~8月中旬(秋芽)    成虫:8月下~9月上旬
第5世代幼虫:8月下~9月中旬(秋芽)  成虫:9月下~10月上旬
第6世代幼虫:10月上~中旬            成虫:10月中~11月上旬
第7世代幼虫:11月中~下旬       成虫:翌年3月下~4月上旬
(第2・3世代の二・三茶への発生被害が大きく、第4・5世代の秋芽に対する発生が多い)

●発生条件

成虫発生期と新芽生育期が一致すると(地域・品種)発生が多くなる。
幼木園・中切り更新園などは産卵に適する新芽の生育期間が長いので発生が多くなる。
品種が混在する地域、早生品種園、早場産地で多い傾向がある。
気象との関係は、晩秋期~初冬期の高温は最終世代虫の羽化死滅で、また春先の寒暖差が大きいと越冬密度が低下し、発生が減少する傾向がある。

防除方法

●防除のポイント

① 1葉期頃に新葉への産卵・潜葉幼虫の状況を確認し防除を判断する。
② 若齢幼虫の潜葉期・1葉期が防除適期、必ず三角卷葉前に防除する。
③ 摘採期が近まり卷葉がみられたら、早めに摘採し、被害を回避する。 
④ 防除薬剤のIGR剤は卵期~表皮下潜行幼虫の初期に、その他の薬剤表皮下潜行幼虫期(潜葉期)に散布する。
⑤ 摘採10日前(2~3葉期)で、卵期の状態であれば防除の必要はない。
⑥ 二・三番茶期は、収穫する新芽の時期の防除のため使用基準の摘採前日数1~7日前薬剤を選んで防除する。
⑦ 2回整枝技術により加害する遅れ芽を除去し、発生を軽減する。
⑧ 秋芽生育期の防除も徹底し、翌年への発生源を少なくする。
⑨ IGR剤、ジアミド系剤は地域により薬剤抵抗性が発現しているので留意し、地区栽培暦採用薬剤で防除する。