鹿児島県経済連・肥料農薬課
発生と防除のポイント
両害虫とも茶の新芽を吸汁加害する被害の大きい重要害虫である。チャノキイロアザミウマの発生・被害は最近やや減少傾向である。二番茶芽生育期から秋芽生育期にかけて7~8世代位長期にわたり発生し、増殖が速く、成虫・幼虫が混在して加害する。晴天・乾燥が続くと多発する傾向がある。茶芽の萌芽・生育初期加害の被害が大きく、二・三番茶期では直接収量・品質に影響し、秋芽では生育・充実が損われ、翌年一番茶収量
・品質等に大きく影響する。
薬剤防除は茶芽の萌芽生育初期の防除が重要で、生育期間が長い秋芽では2回程度の防除が必要である。薬剤の感受性低下も生じやすいので留意する。
チャノミドリヒメヨコバイ (ウンカ)
発生生態
●害虫の種類
昆虫・半翅目
●発生の状況
普遍的に発生 古くから主要害虫 被害大
●形態と診断
寄生・加害特徴:主に新芽加害 主に葉裏・葉層内に生息 全面発生
成虫:体長約3㎜ 淡緑色 歩行・飛翔
卵 :白色・円筒形0.3㎜ 1粒ずつ新梢皮下組織内に産卵
幼虫:1齢・・・孵化直後 淡黄白色 体長約1㎜ 歩行
2齢・・・淡黄緑色 体長1~2㎜ 歩行
3~5齢・・・淡黄緑色 体長2~3㎜ 翅の原基形成 歩行
5齢後、蛹をへずに成虫となる
●被害の様子
萌芽期に被害を受けると、新芽は内部褐変・萎縮・硬化・生育停止する。
比較的に軽いときは、新葉黄化し、葉脈が浮き上がり、赤褐色になる。
ひどくなると、新葉黄化、葉脈の赤褐色化は強くなり、赤葉枯病菌による葉縁・葉先が褐変枯死を生じ、新芽生育は悪くなる。
被害は茶芽生育の初期ほど大きく、生育・収量に及ぼす影響が大きい。
品質への影響も大きく、水色が赤くなり、味は苦味が強くなる
甚だしい場合、新葉は落葉して生育は止まる。
●生態・生活史
越冬:茶株内で成虫(雌成虫主体) 9~11月に越冬成虫が出現
越冬明け成虫は、4月頃新芽の生育に伴い産卵開始
越冬成虫は5月~6月初めまで生存し、産卵
産卵:毎日 1日1~8粒 総産卵数約40粒
卵期間:5~15日
幼虫:幼虫期間10~14日 吸汁加害
成虫:4月には幼虫がふ化し、5月上中旬には第1回成虫発生
年5~8回発生 二・三番茶期~秋期には成虫、幼虫、卵が混在
成虫寿命は高温期約30日 長いもので80日 越冬虫は200日
11月頃から産卵を中止し越冬 吸汁加害は若干続く
30℃を上回る高温では生育が抑制される
寄主植物:落花生 ゴマ キャベツ バレイショ ツバキ サザンカなど
●発生消長
年に5~8回発生し、5月下旬~11月上旬まで発生が続く。
二・三番茶期と秋芽生育期が発生のピークで、盛夏・高温期は一時的に発生が減少する。
梅雨入りが遅いと二番茶期、梅雨明けが早いと三番茶期に多発生する。
●発生条件
晴天乾燥が続くと増殖し、新芽生育期にこの条件があると多発生する。
冬期が温暖な年は発生が多くなる傾向がある。
南面傾斜地、風通しの悪い園は発生しやすい。
更新園、幼木園は新梢の生育期が長いので発生が多く、被害を受けやすい。
●天 敵
影響中 クモ類(ササクモ・ハエトリクモ)、捕食性ダニ、内部寄生蜂が有力天敵
昆虫病原糸状菌エントモフトーラ菌寄生による死亡もみられる。
チャノキイロアザミウマ (スリップス)
発生生態
●害虫の種類
昆虫・アザミウマ目
●発生状況
普遍的に発生 被害大 (本県で発生が問題化したのは昭和50年頃から)
●形態と診断
寄生・加害特徴:新葉および新梢 全面発生
包葉内、展開中の芽、成葉の中肋、チャノホソガ卷葉内に生息んだ部分に潜んでいる
成虫:淡黄色背中に黒い翅 体長雄0.7~0.8㎜ 雌0.8~0.9㎜
少しの刺激で飛び跳ね、飛翔 性比は雌70~80%
卵 :長径約0.2㎜ 新葉・幼梢の組織内産卵 産卵部位やや膨れる
幼虫:淡黄色 体長0.3~0.8㎜ 翅なく歩行
蛹 :1・2齢 淡黄色 体長0.7~0.9㎜ 翅の原基形成
ハマキムシ類卷葉内、枝・幹の割れ目、地上部の落葉などに生息し、羽化
(歩行するが、摂食しない)
●被害の様子
口針を葉組織に挿し、その傷からしみ出る汁液を吸うので傷つけられた組織は褐変硬化する。新梢・中肋では、サンドペーパー状の褐色条を生ずる。
被害が進むと、葉裏の大部分が黒褐色化し、葉は小型になり、湾曲・肥厚し、縮緬状に萎縮する。
包葉内加害では黒褐変し、甚だしいと枯死する。
萌芽期加害では、芽の伸長停止、著しい場合は褐変・枯死し、減収となる。
開葉期加害では、新葉基部付近が縦条状に褐変し、葉の生育は停止し、小型化 または落葉し、減収する。
被害程度は、加害が新芽の生育初期ほど大きく、収量への影響が大きくなり、品質への影響も大きい。
●生態・生活史
越冬:成虫・蛹 株内の落葉・枯葉の間、樹皮の割れ目、ハマキムシの卷葉内
3月中・下旬茶芽が萌芽し始めると活動を開始 産卵・加害
産卵:1回に2~3個 総産卵数約40粒
卵期間:夏期 3~5日 春・秋期 約10日
幼虫期間:約5日 16℃―19日
蛹期間:5~7日 16℃―約10日 32℃―3日
卵~成虫に至る期間:14~20日
成虫生存期間:20日程度
年間の発生回数:7~9回 5・6月までは斉一な発生(成虫→卵→幼虫)
発育適温:20~30℃
移動:高温・多湿・無風状態時に畦間や株上を飛翔 園外からも侵入
寄主植物:カンキツ カキ ブドウ(重要害虫) ツバキ その他
●発生消長
4月~10月まで各虫態が混在し、連続して発生する。旬平均気温が10℃以下で発生は終息する。
二番茶期(6月)~秋芽生育期(8・9月)に多発生し、3~4回の発生ピークを形成する。
新芽の生育に伴って増加し、摘採等で減少する。
●発生条件
一般に降雨が発生に関係し、降雨少なく、晴天乾燥条件で多発生する。
しかし、一度高密度になると、多少の降雨では減少しない。
新芽生育期間の長い中切り更新園、幼木園では発生しやすい。
●天 敵
影響小 捕食性天敵ヒメハナカメムシ 昆虫病原糸状菌・エントモフトラ菌確認
防除方法
●防除のポイント
① 茶芽生育初期加害の影響が大きく、萌芽期の防除が重要である。
② 摘採後も残葉や遅れ芽を加害し、次茶期の発生源となるため、摘採後の防除も有効である。
③ 秋芽への被害は、翌年一番茶の収量・品質や、発生量への影響が大きいため、防除は極めて重要で、2回程度防除する。
④ 更新園、幼木園などは茶芽生育期間が長いため被害が継続し、生育・樹勢に及ぼす影響が大きいことから発生に注意し、入念な防除を行う。
⑤ 生息場所の葉裏や、葉層内に十分薬剤がかかるように散布する。
⑥ 一般に、卵に対する薬剤の効果はないので、残効性の長い薬剤を使用するか、2回散布する。
⑦ 同一系薬剤の多用は、感受性の低下を起こす恐れがあるのでローテーション使用とする。