第8号 主要病害虫の生態と防除シリーズ 網もち病

鹿児島県経済連・肥料農薬課

発生と防除のポイント

古くから多発生していた病害であるが、全国的には少なくなっていた。しかし本県では最近発生が増加傾向で、激発園もみられる。多湿条件で発生しやすく、多湿で担胞子の形成、飛散、茶葉への侵入感染がおこる。主に秋芽に発生し、開葉した上位1~3葉位の新葉に感染し、40~50日後、11月頃に発病する。被害は発病葉の葉枯れ
・枝枯れに進展し、葉層が荒廃し、翌年一番茶等の減収を招く大きな被害を生じる。
薬剤防除は秋芽生育期に炭疽病などと同時防除するが、9月初旬頃、秋芽生育後半 の感染が多いので、この時期に追加防除も必要である

発生生態

●病原菌の種類

糸状菌・担子菌類 (エクソバシディウム レティキュラタム)

●発生の状況

山間地域、河川流域、日当たりの悪い山際園などで発生しやすい 最近平坦地でも発生

●病徴と診断

初め、成葉の裏面に網目状の淡緑白色小病斑を生じる。
病斑は次第に拡大し、網目状の白い子実層を形成する。
葉表面の病斑は紫褐色を呈し、後褐色となる。
古くなると、子実層病斑部は黒変枯死する。
病斑(黒変病斑も)は進展し、葉柄から茎まで達すると枝枯れを起こす。

●被害の様子

病葉は枯死落葉する。病斑は拡大し、葉柄から枝に進展し(赤葉枯病菌が二次寄生関与)、枝枯れとなり、枝条の枯死により茶園の荒廃を招く。
一番茶の芽立ちが悪くなり、芽数が著しく減少する。

●病原菌の性質

発育適温:20~28℃(担胞子の形成・発芽)
発育湿度:高湿度を好む、97%以上の湿度で担胞子形成・飛散・発芽
菌の性質:全寄生菌(生きた作物内でのみ生息) 
担胞子は水中では発芽できず、感染できない。

●伝染・感染方法

越冬:病斑組織周辺の比較的健全部
発生様式:春夏期に越冬病斑の黒変部周辺に子実層(担胞子)形成
→ 一~三番茶芽に一次伝染・発病 → 越夏病斑
越夏病斑形成担胞子が秋芽に伝染 → 秋芽に発病 
伝染:多湿時に担胞子が空気中を飛散して伝搬  
感染:多湿条件で、主に気孔部から侵入

●潜伏期間

小斑点の初期病斑発生まで約20日  典型的病斑発生まで50~60日

●発生消長

主に、秋芽生育期に感染し、10~11月頃に発病する。

●発病条件

秋芽生育期に、降雨が続き、湿潤な日が続くと発生しやすい。
河川流域、山間地域、山陰の風通し悪く、陰湿な茶園で発生しやすい。
樹勢旺盛園で発生しやすい。
三番茶までの摘採園で、秋芽生育期が遅い地帯で発生が多い。
品種と発生:「あさのか」「やぶきた」「あさつゆ」などは弱い。

防除方法

●防除のポイント

① 秋芽生育期に薬剤防除する。(炭疽病と同時防除可能)生育後半の防除が重要である。
② 多発生園では、一番茶後に中切り、深刈等の更新を行い伝染源を除去し、また、被害の進展を防ぐ。
③ 茶園の日当たり、通風を良くする。
④ 特効薬の銅剤、DMI剤による2~3回の体系防除で防除する。