第5号 主要病害虫の生態と防除シリーズ【カンザワハダニ】 

鹿児島県経済連・肥料農薬課

発生と防除のポイント

古くから全国的な茶の重要害虫で、被害は収量、品質への影響が大きい。最近幾分発生は減少傾向であるが、カブリダニ類など天敵の影響が大きく、発生に関与しているように思われる。春期3~5月、夏期8月頃、秋期10~11月頃に発生するが、春期発生の被害が大きい。夏期は更新茶園等で発生しやすい。春期発生は影響が大きいため越冬後産卵増殖開始期の3月初旬頃に殺卵、殺幼若虫効果が高く残効性の優れる殺ダニ剤で基幹防除する。春期、夏期、秋期などの発生期は全生育ステージに有効な速効性の殺ダニ剤で防除する。

発生生態

●害虫の種類

ダニ類・ダニ目・ハダニ科

●発生の状況

普遍的に発生  被害大

●形態と診断

寄生・加害特徴:葉裏に寄生  園全面に発生
成虫:体長0.3~0.4㎜卵円形 赤褐色  休眠雌は朱色
幼虫:体長0.1~0.2㎜黄白色 脚3対 (若虫 0.3㎜ 黄白色 脚4対)
卵 :球形0.13㎜透明~白色      (成虫は肉眼でも見える)

●被害の様子

寄生された葉は淡黄緑色化し、ひどくなると褐変し湾曲・萎縮し落葉しやすい。
新芽は伸びが悪く、加害部は黒褐変奇形化し、激しく落葉する。
減収および被害葉混入茶は品質が低下する。(特に水色が赤くなる)
経済的被害発生は寄生葉率で10~30%以上である。

●生態・生活史

越冬:主に雌成虫 九州では卵・幼虫態でも越冬する。 
2月下旬~3月に休眠から醒める
産卵:10℃以上で 2~2.5個/日 総産卵数40~50個 日数20~22日
増殖:有性生殖 無性生殖(雌虫のみ産卵)あり 発育適温15~27℃
発育所要日数:総日数36~40日  卵期8日  幼虫期3~4日  

●発生消長

春発生:2月下~3月上旬増加開始、一番茶摘採後頃にピーク、5月末頃終息
秋発生:9月中旬頃増加開始し、11月下旬頃まで発生
夏発生:更新園等で8月中・下旬頃秋芽生育期に一時的に発生する

●発生条件

降雨が少なく、乾燥した天候が続くと発生しやすい。
施肥量(窒素)が多くなると発生が多くなり、被覆条件は発生を助長する。
10月下~11月中旬の気温が17.5℃以上で、非休眠雌率が高まり、1月の平均気温が高いと越冬密度が上がり、春期発生が多くなる。
合成ピレスロイド剤など天敵への影響が強い薬剤使用で発生増加。(リサーゼンス)
霜害を受けた茶園では発生・被害が助長される傾向がある。
若虫期5~6日   卵~成虫16~18日

●天敵

発生に影響大  ケナガカブリダニ  ハダニアザミウマ  ハダニタマバエ  
コブモチナガヒシダニ  チリカブリダニなどカブリダニ類

防除方法

●防除のポイント

① 薬剤防除は秋春期増殖開始期(2~3月)の防除を徹底する。              
② 多発生してからの防除効果は低下するので、発生初期防除に努める。
③ ケナガカブリダニなどの天敵に影響の大きい薬剤の使用は避ける。 
④ 葉裏の生息部位や虫体に薬剤がよくかかるように散布する。
⑤ ハダニ防除剤は薬剤抵抗性が発達しやすいのでローテーション使用とする。