第10号 主要病害虫の生態と防除シリーズ 赤焼病

鹿児島県経済連・肥料農薬課

発生と防除のポイント

1900年代初頭から静岡県で発生していたが、1975年に本県でも南九州市頴娃で初発した。その後南薩地域などで多発生し、2003年には約700haで発生認められている。最近は著しく減少し、発生を見つけるのも難しい状況になっている。発生減少の要因は、窒素質肥料施用量削減やマシン油剤使用が少なくなっているためと思われる。
発生予測が困難で、突発的に発生する難防除病害である。細菌性で、蔓延が激しい。主に冬期から春期に発生し、傷感染と推察され、強風や整枝作業などで伝染する。冬期の寒害、凍害、マシン油散布、窒素質肥料多用は発病を助長する傾向がる。発生予測が難しいので、スポット状の初発生を早期に発見し、早急に薬剤防除する必要がある。

発生生態

●病原菌の種類

細菌 (シュードモナス シリンゲ)

●発生の状況

県内の一部地域に発生  発生著しく減少   被害大

●病徴と診断

初期は葉に濃緑色水浸状の小病斑を生じる。
進展すると中肋・葉身に濃赤褐色の円形、不定形、流動形病斑となり、病斑周囲は水浸状で拡大する。一番茶葉の病斑は数㎜の小病斑となる。 
病葉は激しく落葉する。 枝では葉柄から黒変・壊死病斑が拡大する。
初発生はスポット状に局部的に発生、ひどくなると園全面に拡大する。

●被害の様子

成木園では、成葉の落葉や茶芽の枯死により一番茶がかなり減収する。
落葉した発病葉が摘採葉へ混入し製茶品質の低下をもたらす。
幼木園では、落葉や茶芽の枯死により樹勢が弱まり、成園化が遅れる。

●病原菌の性質

発育適温:25~28℃と高い、 (病原性は茶葉が低温遭遇で発現)
しかし、発病適温は15℃前後と低い
増殖:茶葉組織内・水滴中で 分裂増殖のため細菌数増加が激しい

●伝染・感染方法

越冬:葉・茎の小病斑中  越夏:健全な葉・茎と思われるが不明
伝染:水滴中に病斑部から細菌が流れ出し、強風雨により飛散
摘採機、作業機などに付着しても伝染
感染:傷口・気孔から水の存在でおこる 葉柄基部付近からも感染

●潜伏期間

20~30日と考えられるが、条件により長短あり

●発生消長

主に、2~4月頃に多発生し、発生の早い年は11月頃からみられる。一番茶葉への発生は数ミリの小病斑で、その後の発生は殆どみられない。

●発病条件

晩秋から春期低温期の強風雨で発生が拡大する。 
寒害・凍害・雪害・霜害等による葉の障害・傷害は発生を誘因・助長する。
秋冬期のマシン油散布(チャトゲ、ハダニ防除)は明瞭に発生を助長する。
堆厩肥等の過剰施用は耐病性を弱める。幼木園で発生しやすい。
品種と発生:「ゆたかみどり」「おくひかり」「するがわせ」は弱い。
      年により品種の発生が変動する。

防除方法

●防除のポイント 

① 常発園では春秋の強風雨後、整枝後などに予防防除する。
② スポット状の初発の小さな発病集団がみられたら直ちに防除する。
③ 一番茶後に茶園を更新し、伝染源を一掃する。
④ 管理作業で裾葉など茶葉に傷を付けないように注意する。
⑤ 葉裏の気孔部からの感染も多いので、薬剤防除は散布量を多くし、葉裏によくかかるように散布する。