第22号 今年の茶園病害虫発生と防除対策を振り返って

鹿児島県経済連・肥料農薬課

今年も新型コロナの影響を大きく受けた茶業でしたが、茶園管理もほぼ終わりました。県内各地区の来年度用栽培暦改定検討会も終わり、病害虫の発生状況や防除対策の問題点なども検討されて、改定がされていますが、今回は今年の茶病害虫発生状況や防除対策の問題点など振り返り、来年の防除対策への参考にしたいと思います。

  1. 病害の発生と防除対策

〇炭疽病・・・最も普遍的で、代表的病害炭疽病は、二、三番茶期は新芽生育期が梅雨期と重なり、発生はやや多くなりました。特に摘採時期を遅らせるドリンク茶栽培等では摘採葉に病葉が混入する被害などもみられ、新たな対応が必要になっています。一方、三番茶期では深刈り、浅刈りなどを実施する園が多くなり、伝染源病葉の減少でその後の再生芽や秋芽などへの発生は少なくなる傾向でしたが、秋芽生育期の8月は中旬に前線の停滞で記録的大雨、長雨になり、秋芽生育の早かった園では多発生となりました。8月下旬から9月は天候が回復し、生育の遅い園や生育後半の芽へは防除も比較的に実施され、発生は少なくなりました。

 防除法としては、二番茶後の浅刈り、深刈り管理が一般化し、二三番茶期の防除の必要性は低下し、秋芽生育期の防除がより重要になってきました。秋芽生育期の防除は今年のような長雨の場合はダコニール1000とDMI剤の混用散布防除法が最も効果的と思われました。今後、発生に最も関与する降雨などで発生を予察した防除を考慮していく必要があります。

〇輪斑病 新梢枯死症・・・輪斑病は二、三摘採後に発生しますが、今年は一般園では防除不徹底や高温のため二・三番茶期にやや多く発生しました。また、二番茶後の深刈り、浅刈りなどの更新により再生芽への発生もみられています。新梢枯死症は例年同様の発生が続いていますが、三番茶後の輪斑病防除の徹底が何よりも重要です。被害が少ないことからある程度の発生は黙認して良いと思われます。

〇網もち病・・・最近多発生化している病害で、昨年は11月に入り、かなり発病がみられました。今年も8月下~9月秋芽生育後半はやや降雨が多く、湿潤な気候で感染が多くなり、かなり発生がみられています。2-4葉期の混用散布防除法とさらに4-5葉期頃

(1週間後)の銅剤などの追加散布の重要なことが示唆されています。

  • 害虫の発生と防除対策

〇カンザワハダニ サビダニ類・・・この数年春期の発生は穏やかで、今年は晴天温暖な天候で、発生しやすい条件でしたが、発生は少なく、一番茶等への大きな被害はみられませんでした。しかし、更新園の増加のため8月頃秋芽生育期に一時やや発生が多くなりましたが8月中旬の大雨、長雨で発生は抑えられました。今後この時期の防除の必要性は高まってきています。一方、従来重要な防除時期とされてきた秋整枝後の発生は少ない状態が続き、防除の必要性は低下し、栽培暦採用もなくなりましたが、今年は発生がやや多く、越冬密度の高まりから来年春期発生への影響が懸念されています。サビダニ類の発生も一番茶後から二番茶期に一部茶園でみられましたが、最近ではやや減少傾向です。

〇チャノコカクモンハマキ  チャハマキ・・・両害虫とも発生時期は早く、発生量は概ね平年並みで推移し、大きな被害はみられませんでしたが、二番茶期と秋期に少し被害がみられた地域もありました。また、最近の発生傾向は従来と異なり、チャハマキの発生が多い傾向になり変化がみられます。南薩地区などの一部園で、フェロモン剤・ハマキコンN(ロープ)が普及し、効果を上げています。

〇チャノホソガ・・・今年も平年より多い発生でしたが、早場産地の南薩地区で発生が多い傾向で、一部薬剤で効果不足問題が提起されています。新芽生育期と発生期が合うと発生、被害を生じますので、新芽生育初期の産卵、潜葉幼虫確認が重要です。特効剤のジアミド系剤およびIGR系剤は薬剤感受性低下が懸念されますので、今後も注意が必要です。

〇チャノミドリヒメヨコバイ チャノキイロアザミウマ・・・チャノミドリヒメヨコバイは三番茶期までやや多い発生で、一部園では被害がみられましたが、秋芽生育期は大雨、長雨で発生は少なくなりました。チャノキイロアザミウマの発生はやや少なく、被害は少ないでした。使用薬剤の有効性や施肥量の減少による芽の生育状態の影響が示唆されます。

〇クワシロカイガラムシ・・・最近発生はかなり少なくなり、以前のように茶樹の枯死、枝条枯死、樹勢衰弱、茶葉黄化などの被害園はみられなくなりました。今年の発生も第1~3世代とも少なく、特に防除を要するような茶園は少なくなってきました。プルートMC普及の効果の他コバチ類など天敵の影響が考えられています。

〇チャトゲコナジラミ・・・本県に侵入し、10年経過し、県内全域の茶園に発生が拡大しましたが、発生は落ち着いた状態で、成虫の乱舞による作業性への影響、煤病の多発生など寄生程度の高い状態の産地、園は少ない状況になっています。天敵寄生蜂シルベストリコバチの定着活動の影響と他害虫との体系同時防除により被害影響の少ない状態になってきています。天敵への影響が少ない薬剤による第1、3世代時の防除が有効なようです。

〇その他マイナー病害虫・・・赤焼病の発生はこの数年極く一部園で発生が確認され、細菌密度の低下から、発生の心配は少なくなりました。また、黒葉腐病も梅雨期の二三番茶期の被覆栽培の減少などで、発生事例は少なくなっています。マダラカサハラハムシは

秋芽生育期に発生が続き、今後も発生増加が懸念されます。ヨモギエダシャクは局地的に

発生し、ツマグロアオカスミカメも被害は少ないものの一番茶期に発生がみられています。

また、南薩地域で、昨年秋の台風10号などの暴風雨で細菌性病害の「かいよう病」が一部園で発生し、一番茶期に葉枯れ、落葉、新芽の枯死などの被害が発生しました。

〇防除上の課題・・・茶の市況状況から、二番茶後浅刈り、深刈り更新管理が一般化し、本県でも一番茶生産のウエイトが高まり、また、収量確保生産の傾向になってきました。このため秋芽の生育充実を図るための秋芽生育期の防除がより重要になると思われます。主要病害虫の発生時期でもあり、体系防除等で的確な防除が望まれます。秋芽生育期の病害防除は、今年からダコニール1000とEBI剤の混用による2-4葉期1回散布法が多くの地区で導入されました。この防除法は炭疽病、新梢枯死症、網もち病を安定して効率的に防除できる方法ですが、今年は秋芽生育期の8月中旬に約10日間の大雨、長雨が続き病害多発が懸念される状況でしたので、最適な防除技術となりました。

害虫では、現在以前のような多発生被害が少なくなりました。特にカンザワハダニやクワシロカイガラムシでその傾向にあります。これは恐らく、現在の使用薬剤は選択性が大きく、在来天敵類の活性化の影響が推察されます。この傾向を持続することが重要と思われます。薬剤抵抗性や耐性菌発現による防除効果低下問題もみられています。ストロビルリン系やネオニコチノイド系、ジアミド系、IGR系剤などは発現の恐れが高いですので、年1回使用など多用、連用を避ける使用法の徹底が必要です。 最近、茶栽培も輸出茶、ドリンク茶、抹茶、有機茶栽培など多様になり防除も夫々対応が必要になってきました。今後更に技術確立を待ち、適切な防除をすすめてください。